シリアル・ポート

 

 

シリアル・ポートは、オリジナルのPC登場当初から用意されていたシリアル通信用インターフェイスである。アナログ・モデムISDN TAといった通信機器から、PDAとのデータ同期、一部のプリンタやプロッタ、マウス、さらには各種計測機器まで、非常に多種多様な機器との接続に用いられてきた。これはシリアル・ポートがPC互換機の標準装備であったこと、シリアル通信自体が規格化されておりPC以外の分野でも普及していたこと、パラレル・ポートと違って最初から双方向通信が可能だったこと、などがその背景としてある。しかし現在では、シリアル・ポートの役割はUSBが担っており、またIRQI/Oアドレスが固定されていてプラグ・アンド・プレイを阻害することから、レガシーデバイスの1つとして排除されつつある。

シリアル・ポートのコネクタ

これらはPCとの接続に使うケーブル側コネクタ。その形状は通称「D-Sub」と呼ばれるもので、9ピン(左)と25ピン(右)の2種類がある。

 PC側のシリアル・ポートには2種類のコネクタがあり、1つは25ピンで、もう1つは9ピンのものだ。どちらも、通称「D-Sub(ディー・サブ)」と呼ばれる形状のコネクタを使用している。基本的に両者はピン数が異なるだけで信号線は同一だ。また、PC側コネクタがピンの出ているオスで、ケーブル側コネクタがメスであることも変わりない。

 D-Sub 25ピン・コネクタは、シリアル通信の標準規格EIA-232(勧告である「RS-232」という名称のほうがよく知られている)に準拠したものだ(オス/メスが逆になっているが)。これに対してD-Sub 9ピン・コネクタは、IBMPC/ATをリリースする際、25ピン・コネクタでは大きすぎて拡張スロットブラケット1つしかコネクタを配置できない、といった問題を解決するために定義したものだ。25ピン・コネクタから最低限必要な信号だけを選び、D-Sub 9ピン・コネクタの各ピンに信号を割り当てている。いわばIBMの独自仕様である。とはいえ、その後のPC互換機にも、D-Sub 9ピン・コネクタは広まっていき、25ピンとともにシリアル・ポートの標準コネクタとしての地位を確立した。

 1980年代〜1990年代のPC互換機のうち、デスクトップPCならたいてい2つのシリアル・ポートを標準装備していた。'90年代前半までは、25ピンと9ピンそれぞれ1ポートずつという構成だったが、その後マザーボードATXフォームファクタに移行するにつれて、次第に9ピン×2ポートという構成に変化していった。現在では、1ポートのみ、あるいはまったく装備していないPCも見かけるようになってきた。ノートPCでは、I/Oパネルのスペースが狭いことから、1ポートしか装備しないものがほとんどで、サブノート/ミニノートPCの中には、まったくシリアル・ポートが使えない製品もある(ポート・リプリケータで対応している製品もある)。いずれにせよシリアル・ポートは、前述のようにレガシーデバイスとしてPCから排除されていく運命にあることは間違いない。

25ピンと9ピンの変換アダプタ/ケーブル

 PCとシリアルで接続する周辺機器側でも、25ピン・コネクタと9ピン・コネクタが混在しているのが現状だ。もともとは標準規格に従った25ピン・コネクタ(メス)ばかりだったが、PC互換機の普及と周辺機器の小型化にともなって、9ピン・コネクタ(オスが多い)を装備する製品が増えていった。従って1種類のシリアル・ケーブルでは、コネクタ形状が合致せず接続できない場合が必然的に生じる

 そんなときには、25ピンと9ピンのコネクタ変換アダプタや、オス/メス変換アダプタが便利だ。シリアル・ケーブルのコネクタに取り付けることで、PC側や周辺機器側とコネクタ形状を合わせることができる。変換アダプタは、PC関連の量販店にもあり、入手は容易だ。

パラレル・ポートとはオス/メスが異なるが要注意

 ただし変換アダプタを使うときには、接続先を間違えないように注意したい。というのも、PC側のパラレル・ポートもD-Sub 25ピン・コネクタを使っているからだ。パラレルはメスでシリアルはオスという違いを知っていればその区別は容易だが、変換アダプタで25ピン・コネクタのオス/メスを変換すると、接続を間違えやすい。シリアルとパラレルでは、信号の向きや電圧などがまったく異なるので、誤接続すると最悪PC側の電気回路が故障する可能性もあるので気をつけたい。

クロス・ケーブルの扱い

 シリアル・ポートは、周辺機器との接続だけではなく、PC同士を接続してデータ交換にも利用されてきた。そのため、イーサネットのツイストペア・ケーブルと同様に、ストレート・ケーブルとクロス・ケーブル(リバース・ケーブル)という2種類のケーブルがシリアルにも存在する。周辺機器との接続に使うのがストレート・ケーブルで、PC同士の通信に使うのがクロス・ケーブルだ。

 クロス・ケーブルに関する注意点は2つある。1つは、ストレートとクロスを間違えないようにすることだ。購入時にはパッケージに「クロス・ケーブル」などと記されているから区別できるが、ケーブル単体だと外見ではまったく判別できないので要注意である。

 もう1つは、クロス・ケーブルには複数の種類が存在することだ。異なるのは信号線の結線で、これによりフロー制御の方法も変わってくる。フロー制御は、PC同士の通信を司るソフトウェア(たとえばWindowsのケーブル接続やアナログ・モデムの通信ソフトウェアなど)が担当するので、このソフトウェアに合わせて適切なクロス・ケーブルを選ぶ必要があるわけだ。クロス・ケーブルにもソフトウェア側にも、信号の結線図が記されているはずなので、両者をつきあわせて合致することを確認すればよい